Adobe Education Forum 2026 を筑波大学と共同開催
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2026年6月24日、アドビの教育イベント「Adobe Education Forum 2026」が筑波大学で開催されました。今年のテーマは「2040年を見据えた高等教育 ~越境する学びとプロセス・成果の可視化~」。生成AIの急速な進化によって、知識の獲得や情報収集のあり方が大きく変わるなか、大学は何を育み、何を評価し、どのような人材を社会へ送り出していくべきなのか。日本各地の大学から、教育改革のリーダー層の先生方が集まり、高等教育の未来について活発な議論が交わされました。今年で14回目のAdobe Education Forumは、初めて大学との共催が実現。また、司会進行を日本で唯一のAdobe Student Ambassador組織の代表である立命館大学3年の藤田蒼麻さんが務めました。
筑波大学が関東の国立大学として初のAdobe Creative Campus加盟校に
筑波大学は2026年5月、関東の国立総合大学として初めてAdobe Creative Campusに加盟しました。
「Adobe Creative Campus」は、「Adobe Creative Cloud」や「Adobe Express」、アドビの生成AI「Adobe Firefly」を全学生が活用できる環境を提供し、全学的にカリキュラム内外で積極活用することで、AI時代に求められる創造的で生産的なデジタルスキルを全学部・全専攻分野の学生が習得できるよう力をそそぐ高等教育機関が加盟する世界的コンソーシアムです。
なかでも同大学は、日本の国立総合大学として初めて、アドビが2026年2月より新しく提供を開始した「教育機関向けAcrobat Express」を全学生向けに大規模導入しました。
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会場となったのは今年3月に竣工したばかりの未来社会デザイン棟。同大学が新たな学びの拠点として整備した施設です。フォーラム出席者に向けても、筑波大学 教育担当副学長・理事の竹中佳彦先生から「この未来社会デザイン棟は、学生が自ら運営する学生のための建物で、イベントも開催できる新しい学びの拠点です。今日が事実上、初めての大規模イベントとなります」と紹介されました。

「GLOBAL TRUSTの創出」 ~社会変革を促す人材をどう育てるのか
フォーラム冒頭のWelcomeスピーチでは筑波大学 理事・プロボストの加藤光保先生がご登壇。日本の高等教育が直面する課題の提起として、日本の若者の学力は国際的に見ても非常に高い水準にある一方で、自律的に学ぶ力や社会変革を担う人材の育成について指摘した上で、同大学が知識の伝達から「社会変革を促す人材の育成」へと変化すべく様々な教育改革に取り組んでいることを説明しました。

「文理複眼」が創造性を生む――越境する学びと知の創造

続いて、筑波大学 特命教授・学長特別補佐の坪内孝司先生に「越境する学びと知の創造~次の50年を支える教育カリキュラム」と題してご講演いただきました。坪内先生は「創造」が筑波大学の建学以来の理念であり、AIがパートナーとなる現代においては未来社会をデザインし新たな価値を生み出せる人材の育成が不可欠であると述べ、価値の創造には 「文理複眼」が鍵になるとしました。文系と理系を単純に融合するのではなく、「その枠を超えて縦横無尽に『知識』『智慧』の大海を動き回ることができること」が重要だと指摘し、新しい価値を生み出す創造力を育むためにはボーダーを超えて知識を横断的につなぐ力が重要であると説明しました。
その学びの実践例として紹介されたのが、筑波大学附属駒場中・高等学校の「漢詩×美術×生成AI」の教科横断型授業。芸術科教諭 川人武先生と国語科教諭 有木大輔先生より、生徒たちが自作漢詩のイメージをAdobe Fireflyで画像生成し、言語表現と造形表現を往復しながら作品を再解釈することに挑戦した授業概要が共有されました。AIを使うこと自体が目的ではなく、「表現とは何か」「人はどのように意味を読み取るのか」を探究する学びへの発展の可能性が示されました。

最後に坪内先生は、このような越境的な学びによって知識の「引き出し」が増え、それらが相互につながることで新しい発想や創造が生まれると説明。さらに、AI時代だからこそ、検索力やプロンプト力、そして体験的・横断的な学びを通じて、学生が自ら問いを立て、解決策を探る力を育てる教育体系が必要だとまとめました。
調査報告「創造性とAIは学修成果を高めるのか」
ここで、アドビ 教育事業本部戦略営業部部長の泉剛人が「創造性とAIによる学修成果」をテーマに世界10カ国・2800名を対象にしたグローバル調査の結果を報告しました。

調査では、Creative Campusに所属する学生は、学業への自信やコミュニケーション能力、将来に必要なスキルの獲得実感が高い傾向にあることが示されました。また、クリエイティブツールは学生の自信と学習成果を高め、専攻を問わずコミュニケーション力も向上させること、特に日本を含むAPAC地域では活用による認識の差が世界で最も大きいことも明らかになっています。泉は、「重要なのはツールを導入することではなく、創造性とAIを学びの中心に据えることで、学生の成長をより大きく後押しできる」と述べました。
AI時代に大学は何を評価するのか――学びのプロセスを可視化する

北海道大学 情報基盤センター教授・教育データ戦略センター長の重田勝介先生のご講演では、「学びのプロセスと成果の可視化―『つくることで学ぶ』実践より―」と題して、AIやデジタルツールが急速に進化する現代において、知識の暗記や最終成果だけを評価する従来の方法には限界があること、学生がどのように考え、試行錯誤し、学びを深めたかというプロセスそのものを可視化し評価する重要性をお話しいただきました。マルチモーダルな学習活動や、「創ることで学ぶ」「教えることで学ぶ」といった実践を通じて、学生が自ら考え、協働し、創造的に課題解決に取り組む力を育てる必要があると述べました。また、AIを「壁打ち」や「伴走者」として活用し、学生が自分の問いを立て、試行錯誤しながら学ぶ体験も不可欠であるとし、「AIの出力は、使い手本人の創造性や問題解決能力、批判的評価力に比例してのみ、その威力を発揮する」と語りました。さらに、こうした実践を支えるデジタルリテラシーの育成と、分野横断的な学びの場づくりの重要性も強調しました。
Creative Campusを大学改革へどう実装するか
続いて、「Creative Campus構想中!何を活かし、どこを目指すか?」と題して行われたトークセッションには、神奈川大学 理事・副学長の秋吉政徳先生と、東京家政大学 常務理事・人文学部長の小池新先生が登壇。それぞれの大学で進めている教育改革やCreative Campusへの取り組みを語りました。秋吉先生は、入試改革や全学的なデータサイエンス・AI教育の推進、キャリア支援の強化を柱に、デジタルツールを「どの学生も入学後早々に普通に使いこなせる状態にしたい」という観点での学修インフラとして整備する考えを説明。一方、小池先生は「学生ファースト」を軸に、学びの場や設備の整備だけでなく、専門力と人をつなぐ力を重視し、全学的なIT・AIリテラシー向上に取り組んでいると述べました。

両大学とも、クリエイティブツールやAIの導入そのものが目的ではなく、学生の主体的な学びを支える環境づくりが重要であるという認識で一致しました。また、教員と学生が共に学び合う「コラーニング」の姿勢や、ピアサポート・アカデミックサポート体制の強化が今後の課題であるとし、大学の枠を越えた知見や実践の共有が重要であることを確認しました。
世界各国のCreative Campusカリキュラム実践事例

Adobe Education Strategic Development ManagerのTodd Taylorからは、世界のCreative Campusにおける実践事例を紹介。AIの進化により、プロセス重視・高次思考・複雑な問題解決・越境型・実社会応用などの本質的な学びと「Authentic Assessment(真正な学習評価)」が求められていると強調。3C(Collect=情報を集める、Connect=知識を構築する、Communicate=理解を表現する)の学びの構造を繰り返し体験することで、分野横断的なクリティカルシンキングやストーリーテリング力が育まれ、実社会で役立つスキルの育成につながることを各国の実践事例を踏まえて話しました。
学びのプロセスを支援するAIアシスタント・PDFスペース

続いてはワークショップ。アドビ 教育事業本部戦略営業部の石澤眸が、Acrobat AIアシスタント、PDFスペース、Studentスペースを紹介しました。大学のシラバス改訂を題材に、複数の資料を横断的に分析しながら授業改善を行うデモを行い、AIを単なる回答生成ツールではなく情報収集、理解、整理、アウトプットといった一連の学修プロセスを支援するプラットフォームとして活用する未来像を提示しました。
「何を伝えるか」が学びを変える~社会連携と共創が生み出す学びのフロンティア

最後の講演は、立命館大学 副学長・社会共創推進本部長の三宅雅人先生に「社会連携と共創が生み出す学びのフロンティア」をテーマにお話しいただきました。年々進化する立命館大学の社会共創の取り組みの中でも今年の注目は、学生が企業をクライアントとして映像コンテンツを制作した球体LEDプロジェクト。三宅先生が強調したのは、制作物そのものではなく、その前段階にある企画や構想の重要性です。生成AIやデジタルツールによって技術的なハードルが下がった今だからこそ、問いを立て、社会課題と向き合い、伝えるべき価値を考える力が重要になると説明しました。また、学生を教育の受け手ではなく、社会とともに価値を創造する主体として位置付けることの重要性にも触れ、企業や地域との協働を通じて多様な立場の人々と共創しながら学ぶ経験が、これからの時代に求められる創造性や実践力につながると語りました。
リフレクション&オープンディスカッション ―体験から学び、共に創る大学へ

フォーラムを通しての感想として坪内先生は、「学生が自発的に行動できる力をどう育てるかが共通の課題」とし、各大学が独自の制約条件の中で創意工夫を重ねている点に刺激を受けたと語りました。重田先生は、マルチモーダルな学びや社会共創の持続性、企業との連携の工夫、文理複眼の重要性などのディスカッションを受けて、生成AI、「だからこそ体験から学ぶことがますます重要になる」と述べ、本フォーラムのように多様な大学が集う場での事例共有の意義を強調しました。三宅先生は、「Creative Campus加盟校を一つのキャンパス、一つの大学のように捉えたい」と語り、大学間で知見や実践を共有しながら学び合うコミュニティへの期待を示しました。
一方、藤田さんは、Adobe Expressを活用したワークショップや企業・自治体との共創プロジェクトなどの活動を紹介しながら、学生自らが学びを創り出す意義を語り「講義一辺倒の授業から脱却しようとしている先生方がこんなにいることに感動しました」と率直な感想を述べました。
最後に、参加者同士のネットワークや情報交換の継続、体験的・横断的な学びの推進が今後の高等教育の鍵であることが再確認され、フォーラムは多くの気づきと示唆を残して幕を閉じました。
創造・越境・共創が導く高等教育の未来
Adobe Education Forum 2026を通じて語られた内容は多岐にわたりましたが、共通していたのは「AI時代に人間にしかできない力を育てることが大学の役割」という認識です。今後ますます重要になってくるのは「問いを立てる力」「異なる知をつなぐ力」「他者と共創する力」「学びや価値を社会へ伝える力」。AIによって知識へのアクセスが容易になった時代だからこそ、大学には知識の伝達だけではなく、体験を通じて考え、他者と協働しながら価値を生み出す学びの場であることが求められています。
「創造性」「越境」「共創」、そしてその学びのプロセスを可視化し、一人ひとりの成長につなげること。Adobe Education Forum 2026は、2040年に向けた高等教育の未来像を描くとともに、その未来を大学とアドビが共につくっていくための確かな出発点となりました。



